彼の者、魔王と云ったそうな

「なんや、もう帰ってまうんやな」


「お前とはもう関わりたくない」


「ああんっ、いけずう!」



ゆらあっ…と近づいてくる縁に、何故だが危機を感じた山ン本は本能的に刀を抜いた。


「はひゃあっ!」


再び吹っ飛ばされる縁の体は、もう既にズタボロだ。


「んもう、抱きつこうとしただけやさかいに。そう照れへんでもええんやで?」

「……。」



再起不能になるまで吹っ飛ばそうか。


本気でそう思った山ン本だった。


しかしまた縁が起き上がろうとしたため、もう一度斬刃をお見舞いしてそそくさと帰ったという。


そこまで嫌わなくても……。帰り道中、わざとらしい泣き声が山ン本の耳を掠めたり、なかったり。

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