スキというキモチのカタチ。

彬のキモチ。

「彬ちゃん、あのね」




満員電車の中、小さな身体を守る様にして立っていた俺に小さな声でこのはが話しかけてくる。




「なんだ?」





「おばさんから聞いたんだけど。」



(ろくな話しじゃないな、コレは。)


「お見合いしたってホント?」





…。




やっぱりその話か、と思った。


全く、余計なおしゃべりばかりする母だ。この前もこのはに入れ知恵してたな
、確か。




「35にもなってひとりもんだからな、そういう話もあるさ。」



「結婚したいの?」






ダイレクトに問うその表情に思わずドキリとする。



大きな瞳で上目遣いにこちらを見ている。それだけで心臓を鷲掴みにされたような気持ちにさせられる。




「焦ってる訳じゃないしな、会うだけ会って断ったよ。
母さんもいるし。母ひとり子ひとりだから慎重に選ぶさ。」



まるで言い訳みたいだな。



このはには内緒にしておこうと思ってた事だからか、後ろめたい感じが否めない。




ガタン




電車が小さく揺れると同時に小さなこのはがバランスを崩す。



咄嗟に腕で支えてやるとこれまた小さな声で『ありがと。』と言われた。






毎日のようにそばにいるのが当たり前のような存在。


それこそ一回りも年が違うからこのはが産まれた時から知ってる。


おむつしてヨチヨチ歩きのときも、小学校に入学した時も。

少女が大人に変わっていくその様をずっと側で見てきた。





だから。






だから、俺じゃダメなんだ。




このはを幸せにしてやるのは俺じゃない。


このキモチを言い表すなら『父性愛』。




これから先もずっと。











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