スキというキモチのカタチ。

彬の想い。

営業職につくと、いつもどこかしら出歩いているのでなかなか本社にいる事がない。



が、課長職になると一気に外出は減る。


必要な時に応じて必要なだけ出れば用は済むからだ。


ましてや今日は金曜日。

土日は休みの会社だから、金曜日はほぼ社内で書類整理をしている。


(さすがにパソコンばかり見てたら目が疲れたな…。)



作成を済ませた書類をフォルダに入れてパソコンにロックをかけて立ち上がる。


(一服してこよう。)


休憩室に向かう途中、胸にしまってあったスマホが振動する。


(メールか?)



タバコに火を点け、スマホを取り出して見ると古い友人からのメールだった。


『久々に会わないか?』


断る理由もなければ、早くから自宅に帰れば母やこのはに遊ばれるオチだ。


『いいよ、店とかはそちらが決めてくれ。仕事が終わり次第またメールする。』


そう返信するとすぐに折り返しの返信が来た。


『嫁さんも一緒なんだ、お前も彼女連れて来いよ。』



……。



彼女?


いたら苦労しないっつーの。



『結婚もしてなけりゃ彼女もいないよ。
お前は気にせず連れて来いよ。』



そう答える。


一瞬、このはが頭に浮かんだが無理矢理消した。




吐きだす煙に心の中にあるモヤモヤしたものがまざってやしないだろうか。


今朝のアレ、キツかったな。

(結婚したいの、か…。)


責められている訳じゃないのに、後ろめたさからかかなり胃がキリキリした。


専務の娘と見合いをさせられたのは、先月末。

2週間。

ばれなかったのが不思議だった。


母がこのはに入れ知恵してるだろうとは思っていたが、まさかこのタイミングで問われるとは。



(なかなか…聞き出せなかった、とか言うんだろうな…アイツ。泣きそうな顔してやがった。)


いつも後ろにくっついてきて、彬ちゃん彬ちゃんと自分を呼ぶこのはが、いつの間にか成長して感情を含ませて『彬ちゃん』と呼ぶようになった。



愛おしくないわけない。



大事にしてきた、妹みたいな存在だ。


過去に彼女だっていたし、ここ数年は忙しくて彼女を作る暇はなかったが、大人の付き合いをするだけの相手なら困ることはなかった。


それすら億劫になったのは何故だろう。



(今更純愛とか、柄じゃねぇわ。)



タバコの火を消し、デスクへと戻る。


(さて、さっさと片付けて帰りますか。)





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