スキというキモチのカタチ。
「川藤!こっちだ!」



懐かしい声に目線を向けると、高校時代に仲良くしていた高橋 圭が手を挙げていた。


「久しぶり。」



挙げられた手にハイタッチするように手を合わせる。


「何年ぶりに会うのかな、元気か?」

あの頃とあまり変わらない姿の高橋に問われる。


「毎日仕事ばかりしてるよ。

そっち、嫁さん?紹介無しかよ。」


隣の席でふんわりと笑う女性に会釈をする。

「香織です、はじめまして。」


「川藤です、よろしく。あー、申し訳ない。俺が独りもんだから居づらくない?大丈夫?」


(やっぱりこのはを連れてくればよかったか…。)



そう言うとふふっと笑い声がした。


「大丈夫ですよ。」


気にしなくていいと言うことか。



「まずは久々の再会に乾杯するか。」


高橋に言われ取り敢えず頼んだビールを片手に持ちグラスを合わせる。



「こっちに帰ってくるんだよ、俺達。」


高橋がぽつりと話し始めた。



「転職か?」

問い返すと頷く。

「親の後を継ぐんだ。呉服屋なんて今更な感じがあるからさ、やる気なかったんだけど…。」


「何かきっかけがあったのか?」


そう聞くと隣に座る香織を見て顔を赤らめる。

「香織の実家はさ、染物屋なんだよ。
偶然だったんだけどな。
お互いの実家同志で手を組んで、
新しい何かを創り出して行こうって…こいつに背中押してもらったんだ。」

照れ笑いなのか、なんとも幸せそうな顔をする高橋を見ていて羨ましいと正直に思う。


「それよりさ、お前の後をくっついて回ってたチビいただろ?
結婚するのかと思ってたのに、違うのか?」



不意に自分の話を振られてハッとする。



「結婚なんてしないよ。
一回りも離れてるんだぜ。あり得ない。」

自嘲気味にいうと高橋は驚いた顔をした。


「じゃあなんでそんなに傷付いた顔してるんだよ。」



………。



自分でも解らないのに何と答えたらいいんだろう。



「色々あんだよ、これでも。」



当たり障りのないように上手く答えて話を誤魔化す。



この後で、あんなに焦らされる事になるなんて思いもしなかった…。



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