*Pure love*

 ***

 そして放課後。桜の木の下で待った。ぼんやり空を眺める。

「ゴメン、少し遅れた」

 来たのは…

「佐藤」

 制服姿でバックをさげて、桜田君がやって来た。

 目を会わさずに、呼び出してゴメンね、と呟く。

「…で、用事って?」

 急いでいる様子ではない。その事が妙に私を安心させた。

 深呼吸をして桜田君の方に体を向ける。

「あ、のね、私…桜田君のこと…好きです。付き合ってください」

 そのまま下を向いて言った。顔が火照る。桜田君は何も言わない。静寂の中で自分の心臓がバクバク言っているのが聞こえた。

 やっぱり…ダメだったの?もう遅かった?

「……ったく。そんなら早く言えっつーの」

 顔をあげると、桜田君が私の目を見てふっと笑った。初めて見る表情にドキッとする。

「俺、佐藤のことまだ好きだから」

 その言葉に目から水が溢れた。桜田君が慌てる。

「えっ?なっ何で泣いてんの!?俺何かマズイこと言った?」

「ちっ違うの」

 嬉しくて、涙か何でか出てくるんだよ。たくさんの涙が頬を伝う。

 そして、その涙が止まるまで桜田君はじっと待っていてくれた。

「…オッケー。止まったみたいだな」

 はい、ハンカチを渡され、ありがたく使わせてもらう。

「ダメかと思った。この間先輩に告られているの見ちゃったから。…っていうことは」

「あ~見られてたか。うん、断った」

 佐藤がいたから。顔が赤くなる。

 織本君に失恋してから4ヶ月。ずっと桜田君を見続けて、途中で織本君がフラれてしまったけれど、その頃にはもう気持ちは桜田君に向いていた。

 …っていうのは内緒。

「それじゃあ…帰る?」

 コクンと頷いて、鞄を持ち直す。

 歩き始めた桜田君の後を追う。途中で後ろを向かれた。

「速くない?」

 ささやかな気遣いが嬉しくて、頬が緩む。

「大丈夫だよ」

 横に駆けよって顔を覗き込む。

 そう?桜田君はまた歩きだす。

 私はその横でずっと笑いながら喋っていた。


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