かけがえのないもの。
◇◆◇
……ああ、まじかよ。

思わず呟いてしまった。

事がすんだ後、そのやけにすっきりとした恍惚の中ゆっくりとそちらに指を這わせてゆき……あいつがいなくなっていることにようやく気づいたのだ。

「! まじかよ。ちょ、おい! 嘘だろ!?」

無論、嘘じゃない。あいつは今俺の隣にはいない。

いつも気づけば横にいて俺を待っていてくれて。

その白い肌を時々ちょっとピンク色に染めて。

花みたいないいニオイの香水ふってることもあったっけ。

「……っ!」

目頭がジンと熱くなる。涙が出そうなのを必死にこらえた。

俺はバカだ。いなくなってようやくどれほど大切なものだったか気づくなんて……



◇◆◇


どれくらい放心していただろう。鳴り響く鐘の音で俺はようやく我に返った。

とりあえずこの最悪の状況をなんとか打開しなければならない。

置き手紙のようにポツンと佇んでいた茶色い円筒形のものをつまみ上げて俺は考える。

白い壁に四方を囲まれた狭い空間の中で。

「……チャイム、鳴っちまったな」

だとするとしばらくここにくる人間はないだろう。助けは来ないのだ。

「ああぁ……」

どうしようもなくて、ただ頭を抱えることしかできなかった。

やってしまったモノは水に流せるが、あと一時間もこんな中途半端な格好のままでいるのは体力的に……というか精神的につらい。



誰か、俺にトイレットペーパーを恵んで下さい。
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