真夜中の足音(中編)
「最近、物騒ですからね。ここらでも、痴漢の被害が報告されていますんで・・・」

陽子は、警察官に肩を貸してもらい、右足に出来る限り力をかけないように歩いていた。

背負いましょうか。と男は言ったが、さすがにそれは断った。

男は、丸山と名乗った。おそらく歳上だろうが、30にはなってないだろう。まだ若手の警察官らしい精悍で逞しい身体の若者だった。

丸山は、見廻りの途中らしく、乗っていた自転車をその場に置き、陽子のバックを手に持ちながら肩を貸してくれている。

「あ、ここです」

陽子は、鞄の中から、鍵を取り出すと自動ドアの機械に差し込み、ドアを開ける。

「あの、わざわざここまで、すいません。本当にありがとうございました」

陽子は、鍵を鞄に入れると、ケンケンをしながらお礼を述べた。

「いや、お部屋までお送りします。そのままじゃ心配だ」丸山は、陽子の足を見ながら言った。
「いえ、しかし・・・」陽子は言い換えそうとするが、結局丸山に押し切られてしまった。

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