わがまま姫♀



あたしは手に持っていた写真を、ギュッと握り締めていた。



そして、2人に背を向け反対方向に歩き出す。



「……お腹減った」



あたしはトボトボと中庭にいき、ベンチに座る。(←今沢家には中庭がある)



はぁ…。



なんでこうなんのかな。



なんであたしには、あそこに入っていく勇気さえないんだろう。



なんでこういう性格なんだろう。



今日、クリスマスだよ?



恋人たちのクリスマスだよ?



大好きな人と一緒に過ごす、大切な時間。



……なのに。



あたしときたらこれだ。



だって楽しそうなんだもん。



だって仲いいんだもん。



あの間に入って行くのに、どれほどの勇気がいることか。



相当の女じゃなきゃ、簡単には入ってなんかいけないよ。



「……姫央さん?」



背後から名前を呼ばれ、振りかえる。



「あ、牧原」

「なにしてるんですか、こんな寒いところで!」



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