トシノサレンアイ- 狼と仔猫 -
03.隣人

手を引かれて歩き出す。

……ん?
ちょっと待って。

どうしてあたしの家の方向をアズマさんは知っているの!?


「どうして家の方向を知っているのか知りたいのか?」

「ちょ、ちょっと、アズマさん……実はエスパー?」

「くくく、セツナがわかりやすいだけさ」


あっという間にあたしが一人暮らしするアパートの前に辿り着いてしまった。

ちなみに、道案内は全然していない。
もしや……この人……


「ストーカー?」

「俺がもしそうだったとしたら、もっと胸のでかい女追いかけるわな」

「だよね。じゃあ、どうして?」

「隣」

「え?」

「俺、隣に住んでるんだけど」

「ええええええぇっ!?」


そう言えば、高校進学と共に一人暮らしを始めてここに引っ越してきたわけだけど、隣人に挨拶しに行った時ちょうど留守だったような……

家を出る時間帯も帰宅する時間帯も違うようだったから会う機会もなく(あったのかもしれないけど、記憶がない)3年の年月が流れてしまったというの?
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