トシノサレンアイ- 狼と仔猫 -
07.波乱
「ちょっと、出て来てもらってもいい?」
「は、はい……」
あたしは、おずおずと車外へと出る。
「この車、私の会社の物なんだけど、どうして見知らぬ女の子が乗っているのかしら?」
「あ、えっと……その」
しまった。
言い訳が何一つ思い浮かばない。
頭の中が真っ白になりそう。
話から察するに、この女性はアズマの上司だろう。
「部長!」
「あら、如月くん。やっぱり貴方だったのね」
「どうして部長がここに!?」
「貴方が資料を一部忘れていったから私が直々に持ってきたのよ」
「ああっ、すみません……じゃあ、コイツ持ってもう一度営業に……」
「待ちなさい」
「はは、ですよねー」
「見えてたのよ。貴女が女の子車に乗せるところ」
女性は笑顔を崩さず、朗らかにそう話す。
アズマはずっと苦笑して額に脂汗を滲ませている。
それも、そうだろう。上司にこんな現場見付かってしまったんだ。
どんな処罰が待っているのか……
「この子、まだ学生よね?」
「ええ、まぁ……」
「貴女、学校はどうしたの?」
「そ、それは……」
「コイツ、俺の従妹で今日はちょっと具合悪いってんで病院に連れて行こうかと……」
「仕事中に?上司の許可なしで?」