おかしな二人
あの日、表参道であたしの手を引いてくれた彼の姿が見当たらない。
こんなに探しているのに、どうしてもみつからない。
走り続けて呼吸が苦しいのか、みつからない事への焦りで苦しいのか。
それとも、別の……。
苦しさに顔を歪ませ、走って、走って、息を切らせていたとき、大通りを渡った向こう側にやっと水上さんの姿を見つけることができた。
「水上さんっ」
あたしの叫び声に、一瞬その背中が止まったように見えた。
なのに、気のせいだったみたいにまた彼は歩き出す。
なんでよっ。
今、気付いたはずでしょ。
どうして、止まってくれないのっ。
そう思ったときに思い出した。
―――― 敬語は、あかんてゆうてるやろおっ……。