おかしな二人
「どないしたんや?」
いつまでも応えないあたしを怪訝そうに見て、どうなんや? と水上さんは再度訊ねてくる。
「嬉しい……と思う」
「思うってなんやねん」
曖昧な応えに、当然の突っ込みをされた。
「嬉しい。うん」
あたしは、やけくそみたいに言い切った。
「そうかぁ。ほなこれにするわ」
そういうと、店員さんに贈り物やからと付け加えてご購入。
こんなあたしの言葉で決めてしまっていいのか?
そんな風に思っても、早々にここを出たい気持ちが先に立ち、あたしは口をつぐんだ。
「ありがとうございました」
とても洗練された営業スマイルに見送られ、あたしたちは店を出た。
あたしはやっと解放されたマネキン役に、ほっと胸をなでおろす。
蒸し風呂状態だったコートの奥は、一二月の冷たい風に吹かれると一気に冷やされていった。
アクセサリーを購入した水上さんはとてもご機嫌のようで、プレゼント片手に鼻歌なんて歌いながら歩いている。
あたしはコートの襟をかき合わせ、お店をやっと出られたことに安堵の溜息をついた――――。