おかしな二人


「それ、食うんか?」

水上さんが、開いているページを覗き込んだくる。
そこには冬の寒さも忘れさせてしまうほどに、美味しそうなパフェの写真たちが載っていた。

「え? あ、いえいえ」

あたしは、慌ててページを飲物のところへと変えた。

「食いたいなら頼んでもええけど、メシ食われんようになるで」

メシ?
そうか、この後の予定は一応考えているのですね。
アクセサリー店以降は、総てが行き当たりばったりの無計画なんだと思ってた。

夕ご飯は、一体なんだろう。
物によっては、ここでのデザートからは手を引いた方が賢いだろう。

前回の表参道の時のように、レストランへ連れて行ってくれるのだろうか?

そうよね、きっとそうだよ。
だって、ここは大人の高級な街、銀座だもん。
ここまで来て、庶民の居酒屋へ行くなんて、言うわけないよね?

あ、別に居酒屋がダメっていうわけじゃないよ。
でもさ、なんてったって、今日はキリスト生誕の日なわけだし。
しかも、さっき言ったように、ここは高級店が犇めき合う大人の街、“銀座”なのだから。
何もここまで来て、居酒屋へ、GO! なんてこともないでしょ。

それにしても、あたしいつからこんなに高級志向になったんだろう。
人が食べられる、ゲテモノ以外のものなら何でもありがたくいただいちゃいます、ってな感じだったのに、気がつけばちょっとお高い料理を期待している。

慣れというものと、人の欲というものは、恐いものだ。

あたしは、小さく首を横に振り、自分の低俗さに肩を竦める。


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