おかしな二人


意外と、というのは、最近テレビを見るようになってそう知ったから。

以前のあたしなら、水上? 誰それ? てな感じだったわけで。
ミュージシャンが隣の席でお茶してようが、凌みたいな売れっ子のモデルが傍にいようが気づきもしなかった。
けれど、水上さんの存在を理解してからは、一緒に居て目立つ行動はなるべく避けた方がいという考えを身につけたんだ。

だから、このおやじばかりが屯う昔ながらの喫茶店という場所は、絶好の隠れ家というわけだ。

程なくして、口髭を生やしたマスターが水の入ったグラスとメニューを持って現れた。

「なににいたしますか?」

自分よりもはるかに年下で、チャライ男と貧乏女を差別する事もなく、丁寧に訊ねられる。

「コーヒー」

水上さんが迷いなく応える。
やっぱりコーヒーを注文するのが、決まりごとなのかもしれない。

しかし、そんな決まりごとの報告など受けていないあたしは、疲れているせいか甘いものに目が行ってしまう。
あたしが見ているメニューのページには、デザートの名前がいくつも並んでいる。



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