おかしな二人
けれど、水上さんの口からは、あたしにとって嬉しい言葉が零れ出た。
「出て行かんでもええし」
「英嗣……」
「前も言ったけど、明がおらんと、俺が困る」
水上さんはあの時と同じように、少しばかり照れたような表情を浮かべている。
「兄貴の家がどこか知らんけど、通いの仕事になったら朝とか大変やろう。帰りやって、遅くなったら危ないやんけ……」
そうして、身を案じるよなセリフを呟く。
「うん。そうだね」
「それに、ここよりええ仕事なんか、他にないやろ?」
「うん、本当に。こんなわりのいいお仕事いただけて、感謝してます」
あたしは改まったように、ペコリと頭を下げた。
水上さんは、そん風にされるのは苦手らしく、ポリポリと頭をかき、ガブガブとコーヒーを飲む。
「借金返すまで、こき使ったるさかいな。覚悟しときい」
わざとらしく悪そうな顔をして、片方の口角を上げる。
あたしは、そんな表情が可笑しくて笑みを洩らした。