おかしな二人
「凌がね、一緒に暮らそうなんて言い出して」
あたしは笑い話のようにして言い、コーヒーを口に含む。
苦味が口内を満たし、心の内側にまで沁み込んで行くようだ。
水上さんはといえば、異様な驚きようだ。
「えっ!」
なんて、目をまん丸にひん剥いている。
そのせいで、僅かに逸らすようにしていた視線が急に合った。
「あたしのために、部屋を一つ用意してあるんだって。せっかく再会できたわけだし、この際一緒に居るのがいいんじゃないかっていうの。こういうのって、シスコンて言うのかな」
あたしは、また会話に笑いを混ぜ合わせる。
それでも、水上さんの表情はやっぱり真剣なままだった。
「兄貴と……暮らすんか?」
真剣な表情のあとは、神妙な面持ち。
あたしは、凌にしたときと同じように首を横に振った。
「今のままがいい。ここまで頑張ってきたし、今の仕事、結構好きだし。だから、今のままがいい。あ、でも水上さんが出て行けって言うなら、すぐに出ますけど……」
あたしは、この話をしてしまってから、こんな風に言ってしまったら、さっさと兄貴のところへ行け、とでも言われるかも知れないなと少しばかり焦った。