おかしな二人


「そのマリモ。せっかく買ってやったのに、明は要らないって突き返したんだよな」
「そうだったっけ?」

記憶の糸を必死にたどっていくと、微かにその当時のことが思い浮かんできた。
確かあの時、あたしは買ってきてくれた凌に、ありがとう。も言わずに怒ったんだ。

けど、どうして怒ったんだっけ?

「明は、焼きもちを妬いたんだよ」
「焼きもち?」

「そ。それより少し大きめの小瓶に入ったマリモを、当時仲良くしていた近所のお姉さんにもあげたんだ。そしたら、その差を見た明はお姉さんのと比べて、こんな小さいの要らないっ!! てさ……」

あの時は、ちょっと面食らったな。と凌はおかしそうに笑みを漏らす。

「そんなこと、あったっけ?」

言われてみれば、そんなことがあった気はするけれど、やはりはっきりと思い出せなかった。

しかも、あたしが凌に対して焼きもちを妬くなんて、とても考えられない。




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