おかしな二人
「ちょっ……、なにやってんの……」
心のザワツキを振り払うように、もう一度訊ねる。
けれど、凌はいっこうにその体勢を崩さないままだった。
むしろ、抱きつきく腕が余計に拘束を強めていく。
その抱きしめ方は、まるで恋人にでもするようだった。
とても大切な人を、抱きすくめるような包み方。
瞬時に、バーの前で突然抱きつかれた事を思い出す。
あたしに、想う人を重ねてそうしているんだよね?
疑問を口にして問いただしたいのに、声にならない。
「あかり。ずっとここにいて欲しい……」
そう言われた途端、鼓動が早まっていった。
あたしは、もう一度笑い飛ばすように口を開く。
「だから、それはできないって、前にも……」
けれど、その無理に作った笑いを遮るように、耳元では切ない声があたしを縛り付ける。
「明に、傍にいて欲しいんだ。もう、離れたくない」