おかしな二人
「兄貴、具合は?」
凌の事を訊かれ、ビクリと心臓も体も跳ねた。
考えないように、と一生懸命に閉じ込めていた感情がまた体中を支配していく。
抱きしめられ、近づいてきた唇を否応なく思い出し、体が震えた。
悲しげに叫んだ凌の言葉が、胸を苦しくさせていく。
「大……丈夫……」
応えた声が震えた。
「少しも大丈夫に見えへんけどな」
落としていた視線を徐に上げると、力強い瞳があたしを見据える。
「平気だよ。熱……下がったし……」
「ちゃう」
英嗣が、はっきりとした口調で否定する。
「大丈夫かって訊いとんのは、明のことや」
力強い眼差しを逸らすことなく、英嗣が半歩前に出る。
近づいた距離に、心が泣き出しそうになった。