その一枚が恋だと気付くのに、どれほどの時間が必要だろう
部室の前に着き、お互いが肩で息をしていたところでようやく平常心を取り戻した。


「ごめん。

俺、何ていうか・・・」


大勢の前であんなことをしてしまった自分が恥ずかしく、彼女にも迷惑だったのではと思い、申し訳なさそうに顔色を伺った。

彼女はまだ肩で息をして下を向いており、公演が終わって疲れているところを強引に連れてきてしまったことにも申し訳なく思った。


「和中君、見た目よりも力強いね。

それに、足も速いよ」


そう言うと、満面の笑顔でこちらを見た。

その笑顔に胸が高鳴り、緊張がこみ上げてきた。


「どうしても、木ノ内さんに見てもらいたかったから」


そして、部室のドアを開けると、夕日の色が僕たちを思い切り包み込んだ。

今までで一番部室が鮮やかに見えた。



先に部室に入り、彼女に手を差し伸ばした。

彼女は何も言わずにその手を取ってくれて、部室に入り、ゆっくりと歩き出した。
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