その一枚が恋だと気付くのに、どれほどの時間が必要だろう
舞台袖の近くまで行くと、出演していた演劇部の三年生たちが喜びと感動に浸っていた。

女の子たちは涙を見せ、木ノ内さんもまたうっすらと涙を流していた。


(さすがにこれを邪魔するわけにはいかないな)


そう思い、しばらく待っていた。



すると、明らかに観客だったであろう他の生徒が木ノ内さんに近づきだした。


「すみません、良かったら写真いいですか」


その光景に先ほどの不安が蘇り、居ても立っても居られなくなり走り出していた。


「行こう、木ノ内さん」


舞台衣装のままの彼女の手を取り、他の生徒の視線を気にせずに群集を掻き分けて走った。
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