その一枚が恋だと気付くのに、どれほどの時間が必要だろう
いつもと同じ表情で、いつもと同じ仕草で、いつもと同じ場所に座っているというのに、今日の彼女は雰囲気が違う気がする。

今日の彼女はそんなことを思わせるような雰囲気だった。


「あのさ、何か考え事?」


気のせいならいいのだが・・・

そう思い、思い切って聞いてみた。



少しだけこちらに顔を向け、すぐに窓の外に向きを変えると、その表情は今まで見たなかで一番美しく、一番切ないものだった。

夕日が彼女を照らし、部室全体をその色に染めようとしていた。


「和中君は文化祭・・・」


「えっ」


風の音に紛れてしまい上手く聞き取れなかったが、彼女自身もその箇所で言葉を発することを止めたのだろう。

お互いが下を向いてしまい、風の音だけが部室に流れていく。


「文化祭の準備に一生懸命だね」


下を向いたまま、照れ笑いを浮かべた。


文化祭


彼女のその言葉を聞くまで、来週の土曜日に文化祭があるということを忘れていた。

だけど、折角の彼女の言葉を否定するのことに引け目を感じ、彼女の表情を伺いながら、頭の中は必死で何か良い言葉を探していた。
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