その一枚が恋だと気付くのに、どれほどの時間が必要だろう
「まあ、最後の文化祭だしね」


必死で探した結果がこの言葉で、それがそれまでの自分を否定する言葉だということに落胆してしまう。

どうせ誰も見に来やしない、部室に来ても一休みするだけか、人気がないことをいいことにカップルがいちゃつくだけの文化祭の展示など興味は一切なかった。



恐らく写真を広げて眺めていること、それが彼女にとって文化祭に出展する写真選びか何かと勘違いしたのだろう。


「いいね」


その瞬間、僕は文化祭というものを初めて真剣に考えたかもしれない。


「私、これでも一応は演劇部だったの。

こんな性格だから役なんてほとんど貰えなかったし、裏方ばかり。

でも、演劇は好きだったから辞めずに続けてきた」


「そうなんだ」


彼女が演劇部だったということを初めて知った。

そして、僕は彼女のことを部室で会うようになった期間の彼女しか知らないのだと気付いた。


「あれ、でも演劇部って確か・・・」


最後まで言い掛けて、その後の言葉を飲み込んだ。

これを言い切ってしまったら、失礼になってしまうのではないかと咄嗟に考えた。
< 6 / 32 >

この作品をシェア

pagetop