花火
 

*+.。.+*.。.


しんとした空間。


時折聴こえてくる、紙をぺらりと捲る音や本をコトンと置く音。



「……ふぅ」



カタン、と机の上にシャーペンを置き、私は腕を上に上げて座ったまま背伸びする。


ある日の放課後、私は図書館にいた。


この時期の図書室は冷房がついていて、すごく過ごしやすいし、勉強するにはもってこいの場所だ。





最近、私は図書室に行くことが増えた。


図書室は元々好きな場所だし、何より落ち着く。


勉強にも集中できるし、人と関わらなくてもいい場所だから。


でも、今はそれだけじゃない。


“積極的に行きたい”と思える理由が増えた。


……それは、田辺先生。


今までは意識したことなんてなかったけど、初めて先生にこの場所で接した日に気付いたんだ。


図書館は唯一自然に、先生に会えるチャンスが多い場所だと。


そして……先生のことを思う存分、見つめることができる場所。


先生は本当に本を読むのが好きみたいで、結構頻繁に図書室に訪れる。


今日は会えるかな?って思いながら、毎日、期待して行くの。


会えなかった日は、すごく寂しくて。


こんな風に思ってしまう私は、もう、先生のことが本当に好きなんだと思う。


先生と目が合うたびに、どんどん惹かれていって、いつの間にか雅也のことなんて全く考えなくなった。


変わり身の早い自分に、ほとほと呆れるばかり。


それに、叶わない恋、なんてことは分かりきっているのに、本当にバカだと思うんだけど。

 
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