花火
 

──あっ。


私は開いた図書室のドアに反射的に目を向ける。


……入ってきたのは、田辺先生。


とくん、と喜ぶように心臓が鼓動した。


今日は会えた、という嬉しい気持ちが顔に出ないように気を引き締めつつ、私は入り口からは遠く離れた机から、先生のことをこっそりと見る。


今日のネクタイは夏らしい青のストライプ。


爽やかさを狙ってるのかな、って想像する。


こんな風にこそこそと好きな人を見てニヤニヤとしそうになる私は、残念すぎるけど、まるでストーカーのようだ。


その時目に入ったのは、待ってました、と言わんばかりの早さで、女子生徒が先生の傍に寄っていく姿。


この様子も日常茶飯時だと、先生の姿を追うようになってすぐに知った。


先生のことを本気で好きな子は、きっとたくさんいるんだよね……。


私はその中の一人でしかない。


その他大勢の中の一人、だ。

 
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