花火
 

──距離が近付く。


先生の顔が、私の顔に向かって──


……ねぇ、先生?


そんなことされたら、私、期待しちゃうよ?


先生ももしかしたら、私のことを、って……。


もし触れた時には言ってもいい?


好き、って。


先生への想いが容量オーバーになって、今にも溢れそうなの──。


先生のことを見つめていたけど、あまりの近さに恥ずかしくなって目をぎゅっとつぶってしまった。


……でも、触れるかと思っていたものは、いつになっても触れることはなかった。



「……?」



「……くくっ、冗談だよ」



「え?っ!」



先生はいたずらっ子のように笑って、私の頭をくしゃっと撫でた。



「ほら、手伝うから。早く終わらせて帰りなさい」



一気に先生の顔に戻った。


何で?と思ったけど、……それは当たり前のことで。


キスなんてされるわけ、ないんだ。


だってこの場所では、私と先生は、生徒と教師なんだから。



「──……はい」



そう気付いてしまえば、私は“先生”の言葉に頷くことしかできなかった。






──やっぱり私は先生にとって、ただの生徒でしかないんだよね……?


近付いたと思えば離れる。


先生の心の中が見えない。

 
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