蜜事は研究室で
「……で、今度は何なんですか? 帝先輩」

「何度言わせる。この場所では室長と呼べと言っているだろう」

「……何なんですか、シツチョー?」



わたしの問いに対し、彼はその端整なお顔にさらなる微笑みを浮かべた。

……ああ、どんどん、嫌な予感が大きくなってゆく。



「ふっふっふっ、聞いて驚け。これこそが俺の最高傑作! 高所用枝切ハサミ『狩利 取留子(かり とるこ)さん』だ!」

「…………」



バーン!! とでも言いたげな勢いで柄の長い剪定バサミのようなものを取り出した帝先輩……シツチョーに、本気でめまいがした。

わたしは痛む頭に片手をあてながら、嫌々というか渋々というか口を開く。



「えーっと、なんですか、『かり とるこさん』?」

「その通りだ」

「えーっと、あのー、それって普通の高所用ハサミとどこが違うんですか?」

「まったく違うぞ! いいか、まずはこのグリップ部分。普通ここはゴムを使うだろうが、俺はあえて通常よりもさらにやわらかいシリコン素材を使って──」

「あ、もういいです。黙ってください」



そっけないわたしの言葉に嬉々とした説明をぶった切られて、シツチョーは憤慨した。
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