蜜事は研究室で
「ああ、さすが、俺が作った惚れ薬だな。ちゃんと効いて──」

「ッ、薬のせいなんかじゃ、ないです!!」



え、と、彼のくちびるが動く。

わたしは睨むように、キッと帝先輩を見上げた。



「薬なんて、飲む前から……っわたしはずっと、帝先輩のことがすきです!」

「シーナ……」

「わ、わたしだって……帝先輩の笑顔とか低い声とか広い背中とか、たまらんと思ってます!」



ああ、こんなはずじゃ、なかった。

半ベソで、ほとんど怒ってるみたいな言い方で。

だけど先輩は、フッと、口元を緩めた。



「……本当?」



そう言ってわたしの頬を撫でる帝先輩に、こくこくと頷く。

わたしは涙が溜まった目を擦って、再び口を開いた。



「先輩、こそ……わたしはずっと、帝先輩はそういうことに興味がないんだと思ってました」



彼の研究にかける情熱は、揺るぎない。

それを知っていたからこそ、わたしはほとんどあきらめていたのだ。

先輩はやはりやわらかく微笑んで、みつあみがほどけたわたしの髪を撫でる。
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