蜜事は研究室で
「そうだな。……かの有名なドイツの詩人の、エルンスト・アルントはこう言ったんだ。『恋の悩みほど甘いものはなく、恋の嘆きほど楽しいものはなく、 恋の苦しみほど嬉しいものはなく、恋に苦しむほど幸福なことはない。』」

「………」

「けど俺は今までずっと、人をすきになるということがよくわからなかったし、……わからないまま、ずっと生きてくんだと思ってた」



でも、と。

彼はそっと、わたしのメガネを外して、目尻の涙を親指で拭った。



「俺は、きみに出会った。素直に笑ったり、怒ったり、よろこんだりするきみの反応は、本当にかわいくて……きみとなら、恋をしてみたいと、思ったんだよ」

「み、帝せんぱ……」

「すきだよ、シーナ。だいすきだ」



ぶわ、と信じられないくらいの勢いで、止まったはずの涙がまた溢れ出てきた。

わたしは泣きじゃくりながら、ぼやける視界でぎゅっと帝先輩の首に抱きつく。



「せんぱ、……せんぱい~~」

「うん」

「わ、わたしも……っ帝先輩のことが、だいすきです!」

「ははっ。うん、ありがとうシーナ」



彼のくちびるが、ちゅっとわたしの額に押しあてられる。

目をぱちくりさせると、帝先輩がふわりと笑った。
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