流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
 皆、興奮していた。

 皆、信じていた。

 皆、不安を押さえ込んでいた。


 人が宇宙へ飛び立つ、これが最初の第一歩。

 いつか人間は宇宙へ行くだろう。

 あの月に人間の足跡が残されるだろう。

 その足跡はいつまでも風化することなく残るだろう。

 今日というこの日も同様に……


 歴史に刻まれる瞬間が始まろうとしていた。

 ロケットの準備はととのい、地平線に太陽が顔を出す。

 いつか、人類はこの太陽系からさえ飛び出すのだろうか?


「さあ、食え……うまいか?」


 チェルノコフさんがツガンとデジクにパンとミルクを与える。

 二匹はそれを美味しそうに平らげ、それが二匹の最後の食事とならないこと、その場にいた全員が祈っていた。

 二匹に特製スーツを着せ、テレメトリーセンサーを装着する。


「さあ、行こうか」


 チェルノコフさんが背筋をのばして告げた。

 一人と二匹は、ロケットに向かって歩き始めた。

 昇降機に乗り、ロケットの先端へ上っていく。

 僕も、ロケットのまわりにいる人間全員が、それを見つめていた。

 待ち構えていたチームが、二匹をロケットの先端にある特殊ケージに入れられる。


「成功を祈る!」


 チェルノコフさんの声が、ロケットの先端から降ってきた。



 扉が閉ざされ、準備は出来た。

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