その衝動の果て…【完】
母に対してだけは、僕は自分の感情をコントロールするのが難しかった。

自分の感情の部分と、アイツの感情が僕の中で入り乱れる。

どこからが僕で、どこからがアイツなのかわからない…

母を目の前にすると、この切ない胸を締め付けるような、

それでいて恍惚感も一緒に持ち合わせていて…

それを感じるたびに、アイツを恨んだ。

こいつさえ、こいつさえいなければ…

そう何度も思った。


実際、アイツを呪い殺せないかと思って試したこともあった。

そこまで僕は追い込まれた。それでも、もちろんそんなことは無理だった。


でも、アイツがいなくなるということはつまり、

僕の存在も無くなってしまうということかもしれない…

そうはたと気が付いてやめた。

だって僕はアイツの一部であり、アイツは僕自身なのだから…


この理不尽な感情にもがき苦しんで恨み言を言ってやろうと思い、

会おうとしても…

それすら無理だった。

3歳の頃一度会って、約束の10歳以来、アイツに会うことはできなかった。

その他の事はそつなくこなせるのに、こんな能力(ちから)があっても、

この衝動と感情だけは思い通りに行かない。歯がゆい。




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