眼鏡越しの恋
「でも・・・祥子が微妙な言い方しないで、最初から兄貴だって言ってれば、いらねぇ誤解は生まなかったと思うけどな」


「う・・・、それはごめんなさい」


お兄ちゃんのことを『知り合い』と表現した私をじろっと鋭い瞳で見つめる匡に、私は一瞬言葉に詰まって、小さな声で謝った。


「あの人を素直に『お兄ちゃん』って、紹介するのを少し躊躇ってしまって・・・すぐに説明し直そうを思ったんだけど、タイミングが・・・・・」


慌てて早口でそんな言い訳をする私に匡は「ぷっ」と噴出すように笑った。


隣の匡を見上げると、全開の笑顔で笑っていて。
普段、こんなに可笑しそうに笑う人じゃないからびっくりしてしまう。


それに、匡の全開の笑顔はすごく魅力的で。
驚いた顔をして匡を見つめながら、私はドキドキと鼓動が暴れ出すのを止められなかった。


「あんなにお前のこと心配してるのに、真也さん気の毒だな」


「・・・アレはただ単に面白がってるだけだよ」


笑顔のままお兄ちゃんの肩を持つ匡に私が小さく反論すると、匡の全開だった笑顔がふっと柔らかいものに変わった。


「真也さんはお前のこと心配してたよ。俺のことを見る目も挑発的に見せかけてた言葉も全部、お前を心配してるから俺への品定めみたいになってたんだ。だから俺も絶対引けないって思った」


「・・・・・・・・」


私の髪をくしゃっと撫でて、優しい笑顔で話す匡に胸がキュンっと甘く痺れる。
ストレートな匡の言葉に、真っ赤に染まる頬が熱い。


さらにお兄ちゃんの前で言ってくれた言葉がフラッシュバックしてきて、私は嬉しさでいっぱいになって、目の前の匡の腕にギュッとしがみついた。

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