眼鏡越しの恋
無口で無表情な彼



3年になった私は、放送委員会の副委員長になった。


放送委員の主な役割は、完全下校を知らせる放送をするのが日常的な業務。
あとは、体育祭や文化祭の時の放送係りくらい。


でも、その一般的な放送委員としての役割以外に、わが校では週に3回、昼休みに“ランチ放送”なる放送がある。
貴重なお昼休みに誰が聞いているのだろうか・・・と思うけれど、音楽をかけたり、学校であった出来事などを校内ニュースとして放送している。


その“ランチ放送”が結構、メインになっているのが、わが校の放送委員会なのだ。


「ねぇ、今度“ランチ放送”で水泳部の瀬能君のインタビューするって本当?」


どこからその話を聞いてきたのか、登校したばかりの私のところへやってきた美香が嬉しそうに訊いた。


「よく知ってるね・・・」


驚く私をよそに、美香は『すごーい!』と黄色い声を上げた。


「何がそんなに嬉しいの?」


「もうっ、祥子ったら!あの瀬能君だよ?すっごくかっこいいのに、いつも無口で人を寄せ付けない雰囲気だから、話しかけにくいってみんな言ってるでしょ。その瀬能君がインタビューなんて!!瀬能君がしゃべってるのを聴けるなんて、すっごくレアじゃない!」


「そう、か・・・」


胸の前で拳まで握って力説する美香に、私は圧倒されながら小さく答えた。
そこまで楽しみにするほどのものでもないと思うけど・・・


瀬能君とは、私達と同じ3年生で水泳部の男の子、瀬能匡(セノウキョウ)君。
美香が言うように、見かけはかなりかっこいい。
顔はキリっと整っていて、身長はたぶん170㎝後半。
水泳で鍛えているから、肩幅も広くてがっしりしている。
でもゴツイわけではない。
均整のとれた理想的な体格だと、思う。


彼に好意を寄せる女子はかなり多いらしい。



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