眼鏡越しの恋



『“放送室のマドンナ”は、声はサイコーに美声だけど、本人の容姿は残念極まりない!』


そんなことを声高に言われて、私には迷惑以外の何ものでもなかった。
私自身の容姿が残念なのは、私が一番わかっている。


いまどき珍しい(らしい)真っ黒の髪。
肩まで伸びた黒髪に、冴えない顔。
それだけでも残念ポイントは高いらしいが、私には更にもう一つある。


太めで赤い縁の分厚いレンズのメガネ。


視力が悪いからレンズが分厚いのは仕方ない。
コンタクトもドライアイが酷くで合わない。


そのメガネが更に印象を悪くしているというのは、友人の美香の言い分。


『メガネがなかったら、祥子は美人なんだよ!』


と言ってくれる美香は、ホントに友達思いのいい子なんだ。


私は別に、誰にどう思われていても気にしない。
まあ、公然と『容姿が残念』とみんなから評価されているのは、女子として傷つく部分はあるけれど。
でもそれも本当のことだから仕方ないと思うし、言い返そうとも思わない。


ただ。


私の容姿を知らないで、スピーカーから聞こえる私の声に過剰な期待をして、私を確認に来る男子は正直、鬱陶しい。


そして私を見て、あからさまに“残念”な顔をして足早に去っていく男子の後姿を見るたびに、私は消化しきれない理不尽な思いが湧いて、溜息を吐いてしまう。


『勝手に人の容姿を妄想しておいて、それに見合わないからって、落ち込むな!!』


私は心の中でいつもそう叫ぶけれど、声に出して言えるわけでもなく。
ただ溜息を吐くしかできないのだ。




< 3 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop