眼鏡越しの恋
でも、すぐに伸びてきた戸田君の手が、私の頬に触れて、驚いた私はそのままの姿勢で固まってしまう。
戸田君が触れた手に嫌なドキドキが湧きあがる。
瀬能君に触れられた時にはなかった感覚。
戸田君の私に触れている手を払い退けたい衝動に駆られた。
「宮野、いる?・・・・・何、やってんだ」
その時、突然開けられた放送室のドアから現れた瀬能君に、私は息が止まった。
ドアから顔を覗かせた瀬能君は、戸田君と私を見て、眉を深く顰めて。
呟くように訊いたその声はものすごく低く響いた。
そしてドンドンと床の音を鳴らしながら大股で私達に近づいてきた瀬能君は私の頬に触れていた戸田君の手を乱暴に払い退けた。
「・・・触るな」
そう言って戸田君を睨む瀬能君はいつもよりも更に怖い顔をしている。
そんな瀬能君の表情にすら、私はドキンと切なく、でも甘く鼓動が高鳴った。
さっきまで戸田君に感じていた不快な鼓動とはまったく違う。