魔法のキス

2月23日土曜日。


この日が来るまでの間、雄馬から捨てられることばかりを想像して、憂鬱だった。


眠れない日もあったり、突然涙が出たり。
もう私たちダメなのかもしれない。


そんなことばかり考えていた。


とにかく今日は雄馬が来る。
3時に店を閉めてマンションに帰った。


マンションの自分の部屋のドアを開けると、雄馬の靴とパンプスが玄関のポーチに並んでいた。


5秒間くらい私は固まった。
並んだ靴の意味がわかったときに、いろんなことが頭の中を駆け巡った。


お母さんが来てる!
今日来るなんて言ってなかったのに!


バレた……。
怒られるわ。
雄馬は今怒られてるに違いない。


どうしよう……。
別れろって言われるに決まってるわ。


怖い!
ここから逃げ出したい!


いや、ダメだ。
説得しなきゃ!


私は母たちがいるであろうリビングに歩いていった。


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