蓮杖探偵事務所の飄々事件簿
ひぃっ、と引き攣るように息を吸い込む冴子。

咄嗟に振り返るものの。

「っっっ…」

背後には誰もいない。

「~~~っっ…」

安堵の溜息をつく冴子。

こんな不気味な場所にいるせいで、早くも神経が参っているのだろうか。

あんな幻覚を見てしまうなんて…。

きっと怖いと思い込んでいるせいで、目の錯覚が引き起こしてしまった見間違いだろう。

何でも理詰めで説明をつけようとする冴子は、辛うじて悲鳴を上げずに済んだ事を安心しつつ。

「っっっっっっっ!」

再び見た鏡に、やはり蒼白い顔の女が映り込んでいるのを目撃してしまった。

刳り貫かれた空洞の眼と目が合ってしまい。

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