蓮杖探偵事務所の飄々事件簿
本当に底の見えない、濃い錆色の水。

シャワーヘッドから滴った錆を含んだ水が溜まったものだろうか。

それとも天井辺りから雨漏りした水?

そんな事を考えつつ、波一つ立たない水面を見つめていた雛罌粟の目に。

「!!」

人間の顔が見えた。

バスタブの底からゆっくりと浮かび上がってきた、水にふやけたようなブヨブヨした男の顔。

水中で黒髪がユラユラとたゆたっている。

その顔はゆっくりと錆色の水の中で目を開き。

嗤う。

雛罌粟を見て、ニヤリと。

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