蓮杖探偵事務所の飄々事件簿
「雛罌粟さん!」

駆け寄る俊平と冴子。

咄嗟に俊平が雛罌粟の腕を摑むも、腕達の数は数十本。

俊平の力だけでは勝てない。

「っっっ…」

冴子は、動けないでいた。

雛罌粟を助けなければならないのは分かっている。

だが、もし自分もあの腕に摑まれたら…。

雛罌粟同様、引き摺り込まれてしまうのではないか。

そんな我が身可愛さと恐怖が先に立ち、助けに入る事が出来ない。

どんどんバスタブの水の中に浸かっていく雛罌粟の体。

摑む俊平の手も、少しずつ滑って引き剥がされていく。

元より俊平は小柄で非力だ。

この数の腕達に勝てる筈もなく。

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