蓮杖探偵事務所の飄々事件簿
だが。

「成程な」

耕介は水の中から手を出し、濡れた手をスーツの裾で拭う。

ハンカチくらい持っていないのだろうか。

「何が成程、なんだ?」

問いかける夏彦。

「…この建物には何かいる…だがこの幽霊屋敷に幽霊はいない…『屋敷』じゃねぇけどな」

耕介は言い切った。

「あ、貴方はさっきの見てないからそう言えるのよ!でも私達は見たの!腕がいっぱい出てきて…」

言いかける冴子に。

「その腕の持ち主が隠れられる場所が、このバスタブにはあった」

耕介は言う。

「このバスタブ…見かけ以上に深い」

< 48 / 440 >

この作品をシェア

pagetop