ダーリンは12歳年下✦遠恋の果てに
夫は私が妊娠中であろうと親の前であろうと、所構わず殴った。
私も若かったし口が悪かったので、夫はそれに立ち打ち出来ないと手を上げる。
そんな感じ。
だけど我慢の限界を越えると一言も二言も言ってやりたくもなるよ。
まず働かない。
親と一緒に住んでいれば食いっぱぐれは無いのだと甘えた考えで、いくつも仕事を紹介してもらってるのに数日で辞めて帰ってくる。
すぐお金をせびる、盗む。
そりゃそうだ、働かないからお金もないだろう。
何か理由を付けては親からお金をもらい遊びに使う。
そして持ち金がなくなると家のお金を盗む。
当時の私は一切、家計に関与してはいけなかった。
夫のすべての収支も義母が管理していた。
私は毎月一万円だけ渡され、それで娘の物や自分の物を買っていたのだけど、そのお金まで手をつける。
どう考えても、
仕方ないね…
なんて具合いに終らせられる問題じゃない!
しかも私がパートなどに出る事も家族全員で大反対される始末。
いったいどうしろっていうの?
それでも黙ってろっていうの?
そして夫はひと度お金を手にすると何日も外泊をし、私は独り置き去りにされ、夫の両親と息が詰まる生活をする。
家にかかってくる電話に出てはいけない。
家の電話を使ってはいけない。
家に誰かが訪ねて来ても出てはいけない。
義母が頼んだ用事以外で外出してはいけない。
外出する時は近所の人に見付からないように周囲を確認してから外へ出る。
などなど…
私という存在を否定するような事を押し付けられる。
つまりは世間体。
『あなたはここに居ない事にしね。』
こんな忠告を義母から受けた。
だけどこの家でお世話になってる以上、どんな事にも
『はい』
としか言えない立場だった。
あの頃の本当の私はいったいどこに居たんだろうか?
そうして夫の両親と同居して4年後、遂に限界がきた。
『お義母さん!これどういう事!』
私は荒々しい口調で言いながら、子供の成長を残すためにと実家から譲り受けた8ミリビデオカメラをリビングのテレビに接続して再生した。
実はその日、義母からお使いを頼まれてスーパーに買い物行く前に私達夫婦の部屋にビデオカメラを録画セットしておいたのだ。
以前から義母に対しては、私がいない間に私の持ち物やタンスの中などを探ってる疑惑があった。
置いてあった物の位置が変わっていたり、私宛ての手紙まで一度封を開けてる形跡もあったりして怪しかったから。
だからビデオカメラで隠し撮りするために録画セットして外出した。
案の定、撮れてたよ。
タンスを探ったり、日記帳を読む義母の姿がね。
『いや、これは、あのね、、』
しどろもどろの義母。
『もういい加減にして!
こんな家、我慢の限界!!』
私は義母の鏡台の引き出しを丸ごと引っ張り出し、思いっきり中身をぶちまけた。
初めて歯向かう私を見た義母のあの驚いた表情は一生忘れない。
結局、実家に戻った私を夫は一念発起して親から自立しアパートを借りて迎えに来てくれた。
確かにあの時の夫の決意は嘘ではなかったはずなのに・・・