不滅の妖怪を御存じ?
「弓月は千二百年生きてるんだよね?」
「は?アテルイが生きてた頃には弓月もいたからそうなんじゃねえの?」
突然話が弓月に変わったことで有明は少しの疑問を目に浮かべた。
だが藍は有明の視線に含まれる疑問にも気づかなかった。
頭の中にあるのはただひとつ、写真のことだけ。
アテルイから藍まで続く何十人もの顔。
「契約をしてから、弓月はずっとアテルイの一族と共に生きてきたの?」
「そりゃそうだろ。そーゆー契約だからな。」
千二百年。
次々と周りの人間が死んでゆくのを弓月は見てきた。
一人一人と過ごした時間は三十年にも満たなかっただろう。
でも、死ぬ度にほんの少し、悲しみとも言えない感情が生まれていたのかもしれない。
いくら妖怪は人間が嫌いだと言っても、親代わりとして赤ん坊の頃から育てていれば、ほんの少しの情だって湧いてもおかしくない。