不滅の妖怪を御存じ?
それから数ヶ月後。
前族長の指名により弓月が次の族長となった。
百歳の弓月は若すぎるという意見も出た。
だが、その頃には弓月は天狗の中で一番強くなっていた。
「ここの崖一帯は、かつて崖童、くだん、えんえんら達の住処だった。」
弓月が突然そう言った。
阿知は唇を噛み締め右下に目をやる。
崖の下。
どこまでも続く深淵。
ここに住んでいた妖怪たちは皆九木に食べられた。
生き残った妖怪がいるかどうかは阿知は知らない。
「妖怪も少なくなった。生き残っているのは数十種ほどだろう。明日にもいくつ食われるか分かったものではない。」
ここ数日で、九木は恐ろしいほどの速さで他の妖怪達を食べていた。
ゆっくりと、九木は自分の森と自分の体に妖力を溜めて。
阿知は短く息を吸い、弓月に向かって言う。
「俺は弓月を信じてる。」
凪いだ海のような弓月の瞳が見つめてくる。
「けど、今のアテルイの子孫が壱与の封印を解けるとは思わない。」
アテルイの子孫。
妖怪が見える。
そうは言っても人間だ。
ただの人間。
しかも少女。
ちょっとでも脅されればすぐ九木側についてしまいそうな。
阿知の責めるような言い方に、弓月は眉を下げて笑った。
風が吹いて、ビュウビュウと寂しい音がした。
星のない夜。
一ヶ月後。
ダイダラボッチが九木に食べられたという知らせを阿知は聞いた。