不滅の妖怪を御存じ?
「伊勢君は壱与に賭けてるみたいだけど、もしも壱与がダメだったら」
佳那子が眉をひそめて口にする。
紫月も桜も黙ってその先を考える。
壱与以外にも九木を消滅させる方法。
ないわけではないのだ。
ただ、現実的ではない。
森や生き物を絶滅させるり
妖怪は滅びるが、その後すぐ人間も生きられなくなるだろう。
「理事長は神職さんの力を借りるつもりでしょうか」
「……壱与がダメで、自然破壊もダメとなったら、それしかないだろうね。命を賭けたギャンブルみたいなものだけど」
鬼道学園にとっての切り札。
最悪のカードだが、理事長が今準備しているのはそれだろう。
神仏に頼るということだ。
神社や寺院に妖怪が干渉出来ないのは鬼道学園が定期的に貼り替えるお札の力もほんの少しは関係している。
だが、仮に札が無くても神社や寺院に妖怪は入れない。
なぜならそこは、神や仏のテリトリーだからだ。
札は念のためにすぎない。
「どうなっちゃうんだろう」
佳那子が不安そうにそう呟く。
それもそのはず、妖怪以上に神仏には不確定要素が多いのだ。
むしろ分かっていることなど何一つ無いと言ってもいい。
妖怪はどの場所から生まれたのか、妖力、能力などが伝承から分かっているが、神仏の類はその辺が一切不明なのだ。
触らぬ神に祟りなし。
それだけだ。
元々神とは近づきすぎると怖い存在なのだ。
オシラサマや稲荷信仰のように、信仰をやめると祟られるという神様もいる。
だが、祟られるくらいならまだいい。
怖いのは、神仏に干渉した後の、彼らによって何がもたらされたのか全く分からない点だ。