不滅の妖怪を御存じ?
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気になることを言い出した本人のくせに、伊勢千秋はケロリと話題をぶった切った。
「まぁ、どうでもいいか」
「はぁ?」
「あの妖怪が何であれ、壱与の封印を解くことに変わりはないんだから」
だから、ダンがどんな妖怪であっても構わないというのか。
言いたいことを言うだけ言いやがって。
藍は文句を言おうとして、やめた。
ここで言い合っても時間の無駄だ。
竹内天音が藍と千秋を無表情で見つめている。
「もしかしたら、東北の妖怪は牛木と似た種の妖怪なのかもね」
再び歩き出したら、千秋がぽつりとそう言った。
竹内家の屋敷は進めば進むほど暗くジメジメしている。
「最近生まれたばかりの妖怪だから、あり得ないことじゃないし」
牛木は、大まかに見れば海の怪だったはずだ。
ダンは海で生まれたのか。
だが、ダンは妖怪にしては人間への敵意があまり無さそうだが。
藍がいまいち納得しきれないでいると、不意に千秋が足を止めた。
空気が冷たい。
なんとなく、着いたのだなと分かった。
直感でしかないけれど。