anjel







「そんな事があったのに、歌ってくれてありがとな」


「……私が、後悔しない方を選んだだけです」


みっくん先輩が、そう言ってくれたから。


あの時、先輩がこうやって抱きしめてくれたから………


私は、歌う決心がついたの。


「幸望ちゃんが、今生きててくれてよかったよ。」


優しく背中をなでる先輩。


「超いい歌聴けたしな」


「ありがとうございます…!」


涙が出そうになるのをおさえた。


私、先輩の前ではいつも泣いてる気がする……


鼻をすすったら、先輩が顔をのぞきこんできた。


「泣いてんの?」


「な、泣いてないです…」


「うそつけ。

 目に涙たまってるよ~」


そう言って親指で私の目元を拭う先輩。


「笑って、幸望。」


「えっ……?」


顔をあげると、優しく微笑んだ先輩の顔が見えた。


「俺の前は、笑っててよ。

 幸望ちゃんの笑顔見ると、こっちまで笑顔になれるし♪」


「……はい!」


私はそう言って、笑顔を見せた。







 
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