anjel
「…そんなに怒鳴っても、逆効果だぞ」
腕を引っ張られ、暖かい胸の中にスッポリと収まる。
顔をあげると、そこには翔がいた。
「か、翔……?」
「彼女の帰りが遅くて心配なのは分かるけど、怒るのは間違ってると思うな〜」
「心配してた、って気持ちだけでいいんじゃない?」
翔の隣に、亮くんと奏ちゃんが並ぶ。
「幸望ちゃんが怯えてるの、わからない?」
みっくんが、優しくそう言う。
ここからじゃ翔輝の顔は見えなくて、
バクバクしていた心臓が落ち着き始めてきた。
やっぱり、先輩たちが近くにいるのは、
本当に落ち着く。
「……あんたらには関係ないです」
変わらない、怒った声。
先輩相手に"あんたら"って……
「これは、俺と幸望の問題だ。たかがバンド仲間のくせに、深くまで関わるな!!!」
そう叫ぶ翔輝。
顔は見えなくても、ものすごく怒っているのは声でわかる。
なだめなきゃ。
私がはやく謝って、翔輝の機嫌とらなきゃ。
そう、思うのに。
違う感情が私を支配する。