anjel








目を閉じて思い出すのは、


2日前に見た、みっくんのこと。


少し痩せて、前のような元気はなくて、


あの、大好きな笑顔がなかった。


いつも私を笑顔にしてくれる、


優しい陽だまりみたいな笑顔。


泣きそうな、苦しそうなその表情を、


大好きな笑顔でいっぱいにしたい。


今度は私が、笑顔にしてあげたい……


「っ!!」


そうだ。


みっくんを、笑顔にしてあげたい。


そのために、私は……


「「「瑞希に歌を作る?」」」


その日の練習が終わった後、


私は帰る準備をしていた先輩たちに話していた。


そう。


これが、私がみっくんにしてあげたいこと。


「あの日のみっくん、苦しそうでした。そんなみっくんを、いつもの笑顔にしてあげたいんです!」


いつも、私がしてもらっていたように。


「それで、作詞作曲、両方やりたいと思ってます。"orange"では、作曲が出来なかったので……今回は、ちゃんと自分で作りたいんです。だから、作曲の仕方、教えてください!!」


勢い良く頭を下げてお願いする。


前みたいなことにはしたくない。


私が全て書き上げることで、


みっくんへの想いが伝わると思うから。


「…分かった。」


翔の声が聞こえて、頭を上げる。


すると、柔らかく微笑んだ翔の顔があった。


「ダメって言うわけないじゃん♪」


「幸望ちゃんのお願いならなおさらね」


「ありがとうございます…!」


よかった…!!


「…幸望は、作詞から作るのか?」


「そうですね…この前も、作詞しながらメロディが浮かんで来たって感じなので…」


「じゃあまずは、作詞からだな〜!」


「時間あまりないかもしれないから、なるべく早くね」


「分かりました!」


私はその日急いで帰って、


夜ご飯を食べるのも忘れて作詞に没頭していた。










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