anjel








次の日。


「作詞できました!」


「幸望りんはや!!」


詩を書いた紙を、先輩たちに見せる。


みっくんに伝えたいことはたくさんあって、まとめるのが大変だった。


なによりも、感謝の気持ちを伝えるだけじゃなくて、


この歌で笑顔になってほしいから。


「幸望ちゃんさすが!」


「えへへ…」


奏ちゃんに頭を撫でられ照れる。


「…次は作曲だな」


「メロディは思いついた?」


亮くんの言葉に首を横に振る。


「悲しいメロディしか出てこなくて、無理でした……」


笑顔にするための歌なのに、


口からこぼれる音楽は、すべて悲しい音色だった。


こんなのじゃ、笑顔にできない。


そう思ってるのに、みっくんのことを考えると悲しくなって、泣きそうになる。


そうすると自然に悲しい音楽しか出てこなかった。


「…そうか」


「まあ、ゆっくりでいいよ」


奏ちゃんはそう言うけど、


ゆっくりじゃ駄目なことは、みんなわかってる。


…いつ、みっくんがいなくなってしまうか分からないから。


もしかした、今日かもしれない。


そう思うと焦ってしまう。


焦ったって、いい音楽は出てこないのに…


「はぁ…」


自分の無力さにため息が出る。


「…あまり自分を追い詰めるな」


翔がそう言って、私の頭を小突く。


「そうだよ幸望ちゃん」


「作ろう、作ろうと思っても、なかなか作れないもんだよ?自然とこぼれてくるのを待つべきだと思うな♪」


作曲経験ありの亮くんが言うと、


すごく説得力がある。


「はい、ありがとうございます!」


私はそう言って笑った。


大丈夫。


自然とこぼれてくるのを待とう。


「そうだ!今日瑞希に会いに行こうぜ〜♪」


「…そうだな。」


「じゃ、さっさと練習してさっさと終わろうぜ!」


「はい!」


そうして、みっくんのいない練習が始まった。










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