海塔にて



ドアの横のボタンを押す。



ブザーが響き、マジックミラーの向こう側で鉄の壁がゆっくりせり出す。



その奥で、久城はぼんやり壁にもたれていた。



完全にその姿が壁に隠されたのを確認して、片岡は中に入った。



鉄壁の前に食事を置いて、部屋から出、ドアをきっちり閉めた後にまたボタンを押す。



鉄壁がじょじょに引いていき、また久城の姿が露になった。




久城との直接的な接触は、看守には許されていない。



食事も、こうやっていったん壁を作ってから部屋に置いていく。



接触が許されるのは、定期検診でやってくる医師たちだけだ。



一度だけ、彼らに訊いたことがある。



ここまで他者との接触がなくて、久城の精神状態は大丈夫なのかと。



彼らは完璧な微笑を浮かべた。



< 8 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop